『感情にふり回されない子育て』
「子どもにイライラしてしまう」
「子どもが言うことを聞いてくれず怒鳴ってばかり」
「つい手が出てしまう」
「しつけってどうすれば正解なんだろう」
そんな思いを抱えながら、日々子育てをしていらっしゃいませんか。
一日の終わりに、子どもの天使のような寝顔を見て、「こんなかわいい子にどうしてあんなにきつく言ってしまったのだろう」と反省しつつも、次の日には毎日のルーティンに追われて変わることのできない自分がいる。
ペアレント・トレーニングは、そのような経験をされている方や、「感情にふり回されない子育て」や「穏やかな子育て」を目指したい方にぴったりなものです。
子どもを授かり、出産して、育児をするというプロセスでは、新しい生命との出会いという衝撃的な経験を経て、ホルモンバランスが崩れ、体調も万全でない中、いきなりの子育てが始まります。そこでは、それまで自分が築き上げてきた人間関係や仕事の仕方、自分の内面や自分とのつきあい方にも向き合わざるを得ないでしょう。例えば、職場ではうまく仕事を回せて自信もついてきていたのに、家では自分のペースが崩れて家族とのコミュニケーションもうまくいかず、わけもなくイライラしたり、他の人と比較して落ち込んだり……。さまざまな変化を経験するのではないでしょうか。
これは〝最近の子育て〟に起こり始めたことではなく、子育てしている人びとが昔から抱えている問題です。けれどもその解決策は、それぞれのご家庭任せの状態になってしまっています。医学など自然科学領域では、エビデンス(証拠や根拠)をもとに対応策や知見が進化していきます。けれども社会科学領域にある子育てや介護は、各家庭にお任せという、外部の者が立ち入りづらいプライベートなものになっているばかりでなく、科学の知見が入り込まない古風な領域のままです。研究者が正当な方法でエビデンスを積み重ねていっているものの、それが実用につながりにくい側面があるのです。
子育て分野でいえば、その成果の一部は例えば児童養護施設や保育所などの職員研修または資格養成課程で学べ、現場で生かされていますが、一般家庭の子育てには還元されていません。そこで、私たちはこれらの実証されている智を現在の日本の子育て家庭につなぎ渡すことを目的に、〈SomLic(ソムリック) ペアレント・トレーニング〉を開発し、子育て中の方に届くように活動しています。
SomLic とは、the Style of my Life with children の頭文字をとった造語です。子育てしている方々が、子どもと一緒に自分らしい生活スタイルを見つけてほしいという願いを込めて名付けました。ここで、このプログラムを学んだ方々の感想の一部をご紹介します。
◆これからペアレント・トレーニングを軸として子どもと関わっていくことができる。ペアトレ中、主人とどうやって子どもの問題について対応していこうかと話すことができて、すごくいい時間だった。
◆お風呂の中など子どもも自分もリラックスしている時に、昼間の問題シーンを子どもとふり返り、あの時どう言えばよかったかなど話して練習することができ、お互い同じ目標に向かっていけるのが感じられる。
◆遠くから声をかけても伝わらないことを実感したので、肩をトントンと叩いて伝えるようになった。主人にも活用している。
◆ポジティブな声かけができるようにバリエーションを増やしていくことを試みている。スマホの画面に載せて次はこのフレーズを言おうなど意識づけが変わった。
◆児童養護施設で働いていたので分かっていたはずなのに、自分の子どもにできていなかったことを痛感した。娘のイヤイヤ期で疲れていたが、「そうだよね。やりたかったんだよね」とやりたいことに共感することをくり返すことで、子どもは「自分は~したかった」と言えて落ち着くようになってきた。大ごとになる前の小さな火種の時点から丁寧に向き合えば子どもは満足することを実感した。
◆この講座に参加して、意外にも自分がやってきた子育ては間違いではなかったと自信がもてた。
◆保育所の保護者とは、子育てについて困ったことは話しやすいけれど、自分が子育てで大事にしていることや、子育ての具体的な方法を伝え合うのは恥ずかしくてできていないので、そのような話ができてよかった。
◆コロナ禍で保育園にも通えなくなり、それだけで自分のペースが乱れていて、家の中もぐちゃぐちゃだった。自分は何にイライラしているかなどふり返る機会があり、自分が落ち着くことの大切さを改めて感じた。
実際に、講座に参加された方は、みなさん、驚くほど短期間に変わられます。同じ悩みを抱える親御さん同士で話すことで気持ちがラクになったという声や、子どもや夫とのコミュニケーションが良くなったという声が多く、表情まで明るくスッキリします。
ぜひみなさんも、本書を通して、ペアレント・トレーニングの実践に取り組んでいただけたらと思います。
日本で子育てしている方々をサポートしたいという想いで活動を継続してきた中で、このような本としてまとめることができたことを有り難く思っております。ペアレント・トレーニングが多くの方々に届くことを願っております。
二〇二三年初夏
田中真衣
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『感情にふり回されない子育て 親子が変わる〈SomLicペアレント・トレーニング〉』
田中真衣・著 ¥1,650 (税込)
「子どもにイライラしてしまう」「子どもがいうことを聞かず、怒ってばかり」……。
そんな子育ての悪循環に陥っていませんか?
そもそもほとんどの人が、子育ての仕方を学ぶ機会がないまま、いきなりの実践に挑んでいるわけですから、うまくいかないのは当然です。
本書で扱う「ペアレント・トレーニング」は、問題行動のある子どもの治療技法として、認知行動療法をベースに、アメリカで生まれました。
著者はそれを、日本の子育て支援の現場で取り入れやすいプログラムとして開発し、このたび、厚労省の子育て支援事業に採用されました。
今後、多くの方が「ペアレント・トレーニング」にふれる機会が増えるでしょう。
本書では、それに先駆けて、著者が開発したプログラムを書籍化しました。
本書を通して、子どもとの適切な関わり方を学べば、子育ての悪循環を断ち切ることができます。
田中真衣
子育て家族支援SomLic代表/白梅学園大学子ども学部准教授。1980年生まれ。日本女子大学卒業。児童養護施設に児童指導員として勤務した後、英国にて社会政策学修士号取得。上智大学にて社会福祉学の博士号を取得した後、厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部にて障害福祉専門官を経て現職。
SomLicは2007年に児童指導員であった酒井祐美、名倉希織とともに立ち上げ、東京都武蔵野市を中心に活動している。
(※略歴は刊行時のものです)
【目次】
はじめに
第1章 ペアレント・トレーニングを始めよう
第2章 自己肯定感を高める「ほめ方レッスン」
第3章 子どもに分かりやすい伝え方
第4章 困った行動への対処法
第5章 ママ・パパが自分を幸せにする方法
第6章 こんなときどうする? Q&A
第7章 SomLicペアレント・トレーニングをもっと知りたい方へ
おわりに
参考文献
ISBN:9784333029051
出版社:佼成出版社
発売日:2023/06/30