『道元の習慣術』
本書は、鎌倉時代の禅僧・道元の教えや言葉を、現代に生きる私たちの悩みや葛藤の解決に活かす“習慣術”として紹介する本です。お釈迦さまが説かれた真の坐禅を求め、宋に留学して禅を学んだ道元は、日本で多くの人に教えを広めて日本曹洞宗の開祖となりました。
例えば、忙しい日々の中で仕事に追われ、予定に追われ、気づいたらどちらも中途半端に終わっていた……。そんな経験は誰にでもあるものでしょう。
道元は言います。「心を込めて一つのことに集中しなければ、何一つ大切な仏法の知恵を習得することはできません。」と。
この言葉は道元が宋の禅僧から教えられたものです。求道の末に道元は、「余計なことは考えず、ひたすら坐禅に集中することが大切」と思い至り、「只管打坐」という実践法を作り出しました。
ただ、ひたすらに坐禅する「只管打坐」の実践を続けた道元の“習慣術”を、作者の植西聰さんは、「あれこれ手を出すのではなく、一つのことに集中する」ことだと説明しています。「これだ」と思ったことに専念を、一つ一つ丁寧にこなしていく大切さを説いたこの教えは、あれこれとやることに追われ、手に負えず煩雑な日々を過ごしがちな人が取り組める“習慣術”の一つと言えるでしょう。
禅の教えと聞くと、難しそうに思うかもしれませんが、核にあることはいたってシンプルです。本書で、全10章・100の項目で紹介されている道元の教えから、起こりうる些細な悩みの解決に繋がるヒントが得られるはずです。
「人間関係、物、身体、自分の心、すべてのものは、変化していきます。永遠に変化しないものなど、何一つありません。」
何かに行き詰まった時、道元の教えにヒントを得て考え方を少し変えてみるだけで、気持ちが随分と楽になるかもしれません。目の前の問題にとらわれて悩むよりも、変わりゆく日常に柔軟に対応する生き方を心掛ける。小さな習慣の積み重ねが前向きに生きていくことができる強い心をつくっていきます。
いまよりもほんの少し心を軽く、そして強くしたい——そんな方におすすめの一冊です。
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『道元の習慣術』
植西聰・著 ¥1,540 (税込)
曹洞宗の創始者・道元禅師の言葉には、揺るぎない信念と力強さがある。そんな数々の名言を、多彩なエピソードとともに読み解きながら、毎日の生活に活用できる“習慣術”として提案。心のスキルアップを応援する全10章。
植西聰
東京都出身。著述家。学習院高等科、同大学卒業後、資生堂に在職。独立後、「心理学」「東洋思想」「ニューソート」などに基づいた人生論の研究に従事。1986年、長年にわたる研究成果を体系化した『成心学』理論を確立し、著述活動を開始する。1995年、「産業カウンセラー」(労働大臣認定)を取得。
【目次】
はじめに
第1章 集中して生きる
第2章 やるべきことに専念して生きる
第3章 無心になって生きる
第4章 とらわれずに生きる
第5章 柔軟な心を持って生きる
第6章 人のために生きる
第7章 いい時をとらえて生きる
第8章 正しく生きる
第9章 自分を知って生きる
第10章 力を得て生きる
参考文献
ISBN:9784333025626
出版社:佼成出版社
発売日:2012/9/30