『苦しみとサヨナラする人生相談』
恋愛と結婚、家庭や職場における人間関係、お金や病気、死の苦しみまで……人生は生きているだけで悩みが尽きないものです。
本書では、落語家で尼僧の露の団姫さんが、10代から70代までの老若男女のさまざまな悩みを、仏教とユーモアの力でスッキリと解決してくれます。語りかけられているような柔らかい文章と、わかりやすい仏教の教えが特徴的で、仏教の入門書としてもおすすめの一冊です。
16歳の女性は、身内の葬儀に参列した際に、死への恐怖心からか故人とうまくお別れができなかったことを悔やみ、どうしたら死への恐怖を克服できるかを相談します。「死」を直視し向き合っている相談者を肯定しつつ、その心情に露の団姫さんは寄り添います。そして、故人との別れは「先に仏の世界へと生まれ変わる“先輩”を送り出す儀式」と考えるようにアドバイスしています。誰も経験したことがない「死」と向き合うことは、とても難しい問題です。それゆえに、仏教を用いてわかりやすく説明できる露の団姫さんの回答が光ります。
お釈迦さまの教えに「毒矢のたとえ」があります。弟子がお釈迦さまに対して「世界の果て」や「魂と心」について問うたとき、お釈迦さまはその質問に答えることはなさらず、代わりに毒矢に射られた人のたとえを用いて弟子を諭します。
もしも、今まさに毒矢が身体に刺さっている人が苦しみの原因についてあれこれ質問していたらどうなるでしょうか。「答えを理解できなければ矢を抜かない」と自分の考えを固持し続ければ、やがて毒がまわって死んでしまうでしょう。弟子の質問はこのことと同じであるとお釈迦さまは諭したのです。
物事の真理や原因に執着するのではなく、まず今この瞬間の苦しみを取り除くことが先決なのです。露の団姫さんは、悩み相談での「毒矢を抜く」こととは、まずは「話を聞く」、その苦しみに「共感」することとしています。対症療法のように思われますが、毒矢が抜けて初めて仏さまの教えを受け取れるようになるからです。
人は悩むことによって仏の教えと出会い、幸せになれると露の団姫さんは言います。悩むことは悪いことではなく、悩みや迷いを解決するために自分自身と向き合えば、人生を豊かにすることができるのです。悩みの解決をきっかけに自分自身と向き合うための一冊としてみてはいかがでしょうか。
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『仏教で悩みも迷いもスッキリ解決! 苦しみとサヨナラする人生相談』
露の団姫・著 ¥1,540 (税込)
「誰もが自ら命を絶たずにすむ世の中になりますように」
「みんなが自分らしく生きられる世の中になりますように」
──そんな願いから尼崎の町中に、心の駆け込み寺「道心寺」を開いた著者。
そのもとにはたくさんの悩みが寄せられます。
本書では、「恋愛・結婚」「夫婦」「子育て」「仕事・お金」「生と死」など
さまざまな悩みを取り上げ、苦しみを手放すための方法を仏教のアプローチから伝えます。
ユーモアと愛にあふれた著者の回答を読むだけでも、心がほぐれて気持ちが前向きになれる一冊です。
仏教入門書としてもおすすめです。
露の団姫
1986年生まれ。落語家兼尼僧。天台宗不軽山道心寺住職。
高校卒業を機に、噺家になるため上方落語の露の団四郎へ入門。
3年間の内弟子修行を経て主に古典落語・自作の仏教落語に取り組み、寄席・テレビ・ラジオなどで活躍中。
2011年、天台宗で得度。2012年、比叡山行院で四度加行を受け正式な天台僧となる。
年間250席以上の高座と仏教のPRを両立し全国を奔走する異色の落語家。
著書に『プロの尼さん』(新潮新書)、『法華経が好き!』(春秋社)などがある。
【目次】
第1章 恋愛、結婚の悩み
第2章 夫婦関係の悩み
第3章 子育ての悩み
第4章 親子関係の悩み
第5章 仕事とお金の悩み
第6章 心と体の悩み
第7章 仏教で幸せになるために
ISBN:9784333028764
出版社:佼成出版社
発売日:2022/7/30