意外と知らない「仏教のどうして?」|(1)どうして、出家するの?

 

今の生活を捨てないと修行に専念できない


中村元(なかむらはじめ)博士の『佛教語大辞典』に「出家」とは「家を出る、という意味」「家を捨てさること」とあります。当然のことですが、仏教の出家第1号は、家出をしたお釈迦さまです。

お釈迦さまは、白髪の老人を見て「いずれ自分も年老いてああなるのか?」、病に冒された人を見て「病気は避けることができないのか?」、亡くなった人を見て「死から逃れられないのが現実か?」と疑問を持ち悩みます。そして、出家修行者の安らかな姿を見て、「あの境地を手にしたい」と衝撃を受けます。そして、お釈迦さまは、自分だけではなくすべての人が抱える苦しみから解放される生き方を見つけるために出家しました。

出家したものの、当時はまだ、仏教はありません。お釈迦さまは師を探し、教えを探し、6年間も苦行した後に悟りをひらきます。

その後、お釈迦さまは一緒に出家した5人の仲間に教えを伝えることにします。仏道修行のはじまりです。この5人の修行者にとって、出家とは「お釈迦さまの教えを学ぶ修行者の仲間入りをすること」です。「財産、家族、社会的地位など、自分が築いてきたものを一切捨て仏道に専念すること」です。

お釈迦さまは5人の修行僧を2人と3人の2つのグループにわけました。第1グループはお釈迦さまの教えを聞き、お釈迦さまが悟った手法である坐禅をしました。第2グループは托鉢をして食事をしました。そして、2つのグループを交替しながら、教学、坐禅、托鉢を続けていきました。

しばらくするとその5人は悟りをひらき、その噂を聞いて、また55人の修行僧が集まりました。合計で60人が悟りをひらきました。

ある日、お釈迦さまはこの60人に向かって言いました。

「布教の旅に出て教えを広めよう」

こうして仏教は広まり、中国、日本に伝わってきます。現在、日本には13の宗派があります。それぞれ教えの内容や修行方法は異なりますが、ある一定期間、専門の修行期間があります。そこで、一般社会を離れ、隔絶された場所で宗派に伝えられてきた修行を行います。

なぜなら、家庭があれば、家庭が気になります。好きな人がいれば、好きな人が忘れられません。

冷蔵庫があれば、「冷蔵庫に何を入れようかなあ」と気になります。気になることや執着することがあると修行に専念することはできません。

それゆえに、僧侶は「仏教の師と教え・仲間を求め」「社会と隔絶された修行の場に身を置き、修行に専念するため」出家します。

現在、「どのように生きたらいいのか」と悩み出家する人は少数です。多くは「お寺を継ぐため」「お寺の娘さんと結婚するため」「定年退職後の第二の人生を送るため」などですが、これも出家のご縁です。ちなみに、筆者はお寺の息子です。


筆者自画像(イラスト・村越英裕)

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村越英裕(むらこし・えいゆう)
臨済宗妙心寺派・龍雲寺住職、同派布教師。1957年静岡県沼津市生まれ。二松学舎大学大学院修士課程修了。龍澤寺僧堂に入門、中川宋淵老師・鈴木宗忠老師(ともに故人)に師事。「やさしく」「わかりやすく」「楽しく」をテーマに仏教全般、禅宗関係について執筆活動を行う。著書に『禅から学ぶこころの引き算』(同文舘出版)、『ほんとうは大事な「お葬式」』(大法輪閣)、『超訳こころの禅語』(佼成出版社)、執筆監修書に『仏像と仏教』『よくわかる日本の仏教』『日本の仏教と十三宗派』『親鸞と歎異抄』(ともに宝島社)など多数。

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