意外と知らない「仏教のどうして?」|(7)どうして、「住職/坊さん」など呼び方が複数あるの?

 

無難に呼ぶなら「住職さん」や「和尚さん」

 

「お坊さんは何と呼んだらいいのでしょうか?」


一番簡単で間違いない呼び方は、「住職さん」です。息子さんなどが僧侶の場合は、「副住職さん」です。どこの宗派の僧侶に用いても問題はありません。「和尚(おしょう)さん」でもいいかもしれません。

住職というのは、中国の宋時代、お寺の代表者のことを住持職(じゅうじしょく)と言ったことに由来しています。住持職の「持」を略したのが住職です。

間違っても面と向かって「坊主」や「坊主さん」と言うのはさけましょう。もともとは僧房(坊)の主という意味でしたが、現在はよい印象を与えません。かわいいのは「てるてる坊主」くらいです。

副住職さんのことを「小僧さん」と呼ぶのもやめておきましょう。小僧さんは、修行中の年少の僧侶のことです。小僧の反対が大僧(だいそう)です。

さて、「山寺の和尚さんが毬(まり)はけりたし 毬はなし」という童謡があります。そこで、和尚さんは猫をかん袋に押し込んでけります。かん袋というのは紙袋のことです。


それはともかく、「和尚」は古代のインドの言葉で先生や師匠のことを「ウパダヤ」とか「オッジャー」などと呼んだことに由来しています。これが中国で漢字を当てて「和尚」となったといわれています。特に戒律を守る僧侶のことだそうです。本来、和尚たる者は、猫をけってはいけないのです。

井上靖さんの有名な小説『天平の甍』に鑑真和上(がんじんわじょう)が出てきます。律宗(りっしゅう)を伝えた僧侶です。教科書にも出てきます。

実は「和尚」と書いても宗派によって呼び方が違います。厳密に言うと、和尚と書いて天台宗では「かしょう」、浄土宗や禅宗では「おしょう」、真言宗などでは「わじょう」と読みます。律宗では「おしょう」の「しょう」の字が「上」という字です。

(イラスト・村越英裕)


日蓮宗で一般的に使う呼び方が「お上人(しょうにん)さん」です。宗派を開いた日蓮は大聖人、六人の高弟は聖人です。「しょうにん」の「しょう」は聖(ひじり)です。普通の住職はお上人です。浄土真宗もお上人です。

禅宗では住職の住まいを方丈(ほうじょう)ということから、方丈さんとも言います。

また、禅宗の中の臨済宗の場合、僧侶を指導する方を老師(ろうし)さんと言います。悟りをひらいた僧侶のことです。

僧侶の呼び方が数多くあるのは、宗派によって呼び方が異なるためです。

ということは、山寺で猫をけったのは禅宗か浄土宗の僧侶ということになるのでしょうか? 和尚さんは蹴鞠(けまり)がしたかったのでしょうか。猫をけった理由は謎です。

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村越英裕(むらこし・えいゆう)
臨済宗妙心寺派・龍雲寺住職、同派布教師。1957年静岡県沼津市生まれ。二松学舎大学大学院修士課程修了。龍澤寺僧堂に入門、中川宋淵老師・鈴木宗忠老師(ともに故人)に師事。「やさしく」「わかりやすく」「楽しく」をテーマに仏教全般、禅宗関係について執筆活動を行う。著書に『禅から学ぶこころの引き算』(同文舘出版)、『ほんとうは大事な「お葬式」』(大法輪閣)、『超訳こころの禅語』(佼成出版社)、執筆監修書に『仏像と仏教』『よくわかる日本の仏教』『日本の仏教と十三宗派』『親鸞と歎異抄』(ともに宝島社)など多数。

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