【公演情報】
2023年度 大津市伝統芸能会館 主催能楽公演
能に描かれた念仏 第4回 新春公演
能の中での“念仏”の受容と表現に着目し、それぞれ性格の異なる4つの演目から、念仏と能双方の魅力をお楽しみいただた本企画も、残すところあと1回となりました。
最終回となる第4回では新春公演として、おめでたい狂言とハッピーエンドの能を上演いたします。
京都、嵯峨清涼寺での大念佛の最中に繰り広げられる親子再会の物語「百萬」をこの度は、舞の入る特殊演出でご覧いただきます。全国的に活躍される大人気の能役者・味方玄氏のダイナミックな舞台にご期待ください。また公演の前半には、鉢叩きたちが賑やかに登場する狂言「福部の神」を、京都を代表する茂山狂言会の皆様にお願いしております。中世の芸能者である珍しい「鉢叩」の姿をお楽しみください。
【公演概要】
開催日時:2024年1月6日(土) 14時開演(13時30分開場)
会場:大津市伝統芸能会館 大津市園城寺町246-24
【内容】
狂言『福部の神 勤入』(大蔵流)
福部の神:茂山 千五郎
鉢叩き:茂山 宗彦、茂山 茂、茂山 千之丞、島田 洋海、茂山 竜正、茂山 虎真
後見:山下 守之
能『百萬 法楽之舞』(観世流)
百萬:味方 玄
子方:味方 遥
男:有松 遼一
門前の男:茂山 逸平
笛:杉 信太朗
小鼓:成田 奏
大鼓:河村 凜太郎
太鼓:前川 光範
後見:味方 團、味方 梓
地謡:青木 道喜、吉浪 壽晃、片山 伸吾、河村 和貴、大江広祐、谷 弘之助
主催・お問い合わせ:
大津市伝統芸能会館
https://www.otsu-dengei.jp/
tel 077-527-5236
mail info@otsu-dengei.jp
後援:三井寺 京都新聞 大津市議会
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【あらすじ】
狂言『福部の神 勤入』
「阿弥陀の聖」とよばれた空也上人によって行われた踊念仏は、民間に広まるに連れて当時の芸能であった散楽や田楽の人々が加わり、伴奏に太鼓や簓などの楽器が取り入れられるようになったと考えられています。やがて空也上人の踊念仏を受け継いだ人々は「空也僧」として全国に分布し、観喜踊躍念仏(踊念仏)を発展させました。鎮魂舞踊の意味を有する踊念仏には、瓢(ひさご)が打楽器として取り入れられたのです。
京都の四条坊門櫛笥町にある空也堂を中心に十八家の空也僧が住み、かれらは「鉢敲」と称したそうです。空也僧たちは妻帯し普段は茶筅を作って生活していたと言われております。(参考:五来重『踊り念仏』平凡社)
この狂言は大勢の鉢叩(=茶筅売)が、北野天神の末社である福部の神に参詣し踊念仏を奉納します。するとそこへ福部の神が姿を現し、富貴を約束するという内容です。福部は瓢の読みと同じ「フクベ」。鉢叩の楽器が瓢であることから、その神として登場するのです。
新春にふさわしい祝言性のある演目であり、本来この狂言は北野天神を舞台にした能『輪蔵』の間狂言ですが、この度は単独の狂言として上演されます。
能『百萬 法楽之舞』
嵯峨清凉寺釈迦堂では融通大念仏が催されていました。そこへ、男が幼い子を連れて訪れます。この子は奈良の西大寺で男に拾われ養われているのでした。子連れの男は、門前の男に面白いものは無いかと尋ね、門前の男が近頃現れた女の物狂いに念仏の音頭を取らせてみようと提案します。こうして門前の男が下手な念仏で女を誘い出し、みごと大念仏に参加させることになりました。実は、この女こそ、西大寺で拾われた子の母親だったのです。生き別れた我が子を探すうち物狂いとなった女は、この清凉寺の釈迦堂に辿り着き、狂乱の中で念仏を披露し、やがては我が子との再会を願って清凉寺の本尊に祈念します。
自分の母親であることに気付いた子は、男に女の素性を確認してもらうことにしました。女は出自や、生き別れの我が子を探していると言って、更に仏に奉納する法楽の舞を披露します。
釈迦牟尼仏と阿弥陀仏を信じて讃嘆する母親の姿に心を打たれた男は、早速、連れていた子を引き合わせ、親子は感動の再会を果たします。
こうして、母と子は無事に都へ帰って行くのでした。