【終了】【イベント情報】能に描かれた念仏 第3回 能『當麻』(主催:大津市伝統芸能会館)

【公演情報】
2023年度 大津市伝統芸能会館 主催能楽公演
能に描かれた念仏 第3回 能『當麻』

浄土思想の中で育まれた称名念仏は、国内で独自の発展を遂げ、長い歴史の中で各時代の文化に大きな影響を与えて参りました。
鎮魂や祖先供養などの習俗と結びつき芸能へと展開された念仏の姿は、現在でも各地で継承されている民俗芸能にみることができます。
多くの芸能を吸収し、中世に大成された能においても、“念仏”を取り入れた様々な人間ドラマが生み出されました。
この度の企画では【能に描かれた念仏】と題し、“念仏”を扱った演目の中から性格の異なる四つの作品を取り上げ、その魅力と普遍性を体感していただきます。
第3回は、『當麻曼荼羅縁起』に基づき、中将姫の伝説と念仏の功徳を讃歎した『當麻』を上演いたします。中将姫が体験する奇跡と、『称讃浄土経』による壮麗な浄土の描写が渾然一体となって繰り広げられる神秘的な物語です。中将姫の法悦の向こうに垣間見る古代の仏教世界を、青木道喜氏の円熟した芸でお楽しみください。また演能前には、當麻寺中之坊から貫主の松村實昭氏をお招きして、當麻寺と當麻曼荼羅の魅力をご紹介頂きます。

【公演概要】
開催日時:2023年11月4日(土) 14時開演(13時30分開場)
会場:大津市伝統芸能会館 大津市園城寺町246-24

【内容】
お話 
當麻寺と中将姫の當麻曼荼羅について:松村 實昭(當麻寺 中之坊 貫主)

能『當麻』(観世流)
シテ(化尼/中将姫):青木 道喜
ツレ(化女):宮本 茂樹
ワキ(念仏行者):江崎 欽次朗
ワキツレ(従僧):松本 義昭、大坪 賢明
アイ(門前の男):茂山 忠三郎
笛:森田 保美
小鼓:吉阪 一郎
大鼓:河村 大
太鼓:前川 光範
後見:味方 玄、大江 広祐
地謡:河村 和重、古橋 正邦、田茂井 廣道、松野 浩行、河村 和貴、河村 浩太郎

主催・お問い合わせ:
大津市伝統芸能会館
https://www.otsu-dengei.jp/ 
tel 077-527-5236
mail info@otsu-dengei.jp
後援:三井寺 京都新聞 大津市議会

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能『當麻』【あらすじ】
天平の頃、横佩の右大臣・藤原豊成の娘である中将姫は、世を儚んで二上山の麓の當麻寺に参籠し、“生身の弥陀”に見えんと一心不乱に『称讃浄土経』を読誦する日々を送っていました。ある夏の静かな夜、姫の元に忽然と一人の年老いた尼僧が現れます。尼僧は姫に、弥陀に会いたいのであれば、蓮から採った糸を集めるよう告げます。姫はいわれるままに、河内と大和から蓮を集め糸を取り、寺の池で清めると五色に染めて桜の木にかけて干しました。そしてこの糸で瞬く間に一丈五尺の曼荼羅を織り上げたのです。実は、姫に助言をしたこの尼僧こそ阿弥陀如来の化身でした。それを知った中将姫は、自らの願いが成就したことを喜び、阿弥陀如来の来迎に感涙するのでした。
あるとき、熊野参詣を終えた念仏行者の一行が當麻寺を訪れました。一行が浄土を欣求し称名念仏を行っていると、尼僧が女を伴って現れ、弥陀信仰の功徳を説きます。當麻曼荼羅ゆかりの染殿の井や極楽の七宝宝珠を思わせる桜の謂れを語りつつ、ひたすら念仏する尼僧。やがて中将姫の伝説を語り始めました。折しも如月の中五日、しかも彼岸の中日です。彼岸の法事にここへ来たのだと言う尼僧は、自らこそが夢中に現じた阿弥陀如来であることを明かし、紫雲に乗って二上山へと消えてゆきました。
曼陀羅堂に日参に訪れた門前の男から、當麻寺の縁起を詳しく聞いた行者たちは、今しがたの奇特を喜び、留まることにします。するとその夜、行者の夢に奇瑞を示す妙音とともに、中将姫が現れました。いまや浄土にて歌舞の菩薩となった姫は、浄土と弥陀を称えて舞ってみせます。こうして念仏行者は、壮麗な称名念仏の中で、夢の裡に夜明けを迎えるのでした。


能『當麻』の前シテ(化尼) 演・青木道喜 撮影・金の星渡辺写真場

 


能『當麻』の後シテ(中将姫) 演・青木道喜 撮影・金の星渡辺写真場