近年、三人に一人がうつの傾向にあるといわれています。うつによる自殺者も増え、社会が複雑化する中、職場や生活の場で人間関係はますます希薄になっています。うつにならない方が難しいと思えるような現代社会において、「うつは、〝自分にとっての幸福〟を捉え直す大事なチャンス」と精神科医である高橋和巳氏は語ります。職場への復帰を果たした34歳・女性の事例を通して、「うつ病」の心の構造を探り、医学的な理解を深めることができる一冊になっています。 ここがポイント（３つ） ・「うつ病を克服したときに、新しい人生観・世界観・幸福感を見つけることができる」ことを読者に優しく伝え、希望と勇気を与える ・職場への復帰を果たした34歳・女性のうつ病克服の事例を通して、「うつ病」の心の構造を探り、医学的な理解を深めることができる ・「うつの治癒」「再発予防」「生き方を変えるための準備」等が的確に書かれているため、すぐに活用できる
高橋和巳 (たかはし・かずみ)
精神科医・医学博士。一九五三年生まれ。慶應義塾大学文学部を中退、福島県立医科大学を卒業後、東京医科歯科大学にて大脳生理学・脳機能マッピング等の研究を行った。長く都立松沢病院に勤めて精神科一般の診療の他、精神科救急やアルコール専門外来、家庭内暴力・拒食症・引きこもり等の家族問題に関わってきた。同院精神科医長を退職後は都内でクリニックを開業し診療を続けている。また、カウンセラーの教育にも熱心でスーパーヴィジョンを行っている。著書に、『子は親を救うために 「心の病」 になる』『心を知る技術』(筑摩書房)、『人は変われる』『新しく生きる』(三五館)、『わたしは 「悪い子」 ？』(心のたんけん・学研) などがある。
【目次】
はじめに うつ病は人の人生を変える
プロローグ うつ病の予防ワクチンはあるの？
うつ病予防のワクチン
うつ病の予防薬がない理由１—— 「頑張り」 と 「うつ気分」 は表裏一体の関係
うつ病の予防薬がない理由２——脳科学から考える
人生を豊かにする 「頑張り」 とうつ病になる 「頑張り」 との違いは？
第一章 うつ病の原因は 「自分を責めること」
１．うつ病なのに休まない理由は？
うつ病には四つの重症度がある
三四歳、女性、中等度症のうつ病
２．頑張れないのなら、死んでしまいたい
診断書 一ヵ月の自宅静養と休職が必要
人が死を賭ける 「規律」 とは
３．うつ病の原因は、強い自責の念
自責の念＝自分への怒りがうつ病を発症させる
頑張りと自責の念を生み出す源は、生きるための規律
頑張りの空回り
４．うつ病の症状を二つのグループに分けて理解する
国際疾病分類第10版 (ＩＣＤ-10) の一六の症状
見逃してはいけない症状、①睡眠障害 (早朝覚醒) と②食欲減退
本書だけの 「ちょっと違う」 うつ症状の分類
（１）疲れ切って 「動かなくなる症状」
（２）動かない 「自分を責める症状」
第二章 回復の第一段階——まずは薬の力を借りて休む
１．何もしないで、ただ体を休める
ぶらぶら、ごろごろが治療
安心して休むための、心がまえ
生命力の基本、「食べたい！」 が復活する
２．うつ病の脳科学 モノアミン仮説
セロトニンとノルアドレナリン
モノアミン仮説
うつ病の脳科学、二つの誤解
大脳と脳幹
３．生命力の回復に三週間
第三章 回復の第二段階——薬の力から、心の力へと切り替える
１．休職を延長する
喜びと不安・焦り
職場復帰へのハードル
職場復帰の二つのステップ
２．薬が効かないうつ病・「わがままな」 うつ病・「本当の」 うつ病
抗うつ薬と症状との関係
薬が効かないうつ病その１、悲哀性うつ病
薬の効かないうつ病その２、「わがままな」 うつ病／他罰的なうつ病
３．指示と助言の治療から、支持的な療法へ
「とりあえず」 の効用
うつ病になりやすい頑張り方
もう一度、頑張る、職場復帰の決断
第四章 うつ病の治癒、再発予防、生き方を変える準備
１．「社会」 へ復帰する
職場復帰の朝、悲しみと怒りの中で頑張る
不思議な未視感 (ジャメヴュ) の体験
２．生き方を変える準備 武井さんの認知行動療法
認知のゆがみ／自動思考／人生のスキーマ
もともとの自分らしさ＝マイペース
人の評価を気にし過ぎる自分
もっと頑張らないといけない、そうしないと怖い
３．うつ病の再発予防法
自分をまるごと受容する
うつ病、再発か？
第五章 新しい生き方が始まる
１．納得できない回復
そのまま自分を思いとどめると、心の緊張が消える
予想しなかった回復に戸惑う
２．病気になってよかった
うつ病の平均的な治療期間
今までで一番納得ができる生き方
エピローグ ありのままの自分を生きる
人はどうしてありのままの自分を受け入れないのか？
頑張ってもいいし、頑張らなくてもいい
おわりに
ISBN：9784333024643
出版社：佼成出版社
発売日：2011/2/28