新装改訂版 道はるかなりとも
新装改訂版 道はるかなりとも
『道はるかなりとも』(1998年)の新装改訂版。戦前の1938年(昭和13年)に5歳で仏門に入り、修行・修学を経たのち、愛知専門尼僧堂の指導者として多くの尼僧の指導・育成にあたってきた著者の自伝的エッセイ。
宗教(者)のあり方が問い直される今、昭和・平成・令和を貫く「尼僧という生き方」の記録を通して、これからのあるべき仏教(者)の姿を浮き彫りにする。
青山 俊董
一九三三年(昭和八年)、愛知県一宮市に生まれる。五歳で無量寺(長野県塩尻市)に入門する。十五歳で得度し、愛知専門尼僧堂で修行するかたわら定時制高校に通う。尼僧堂の課程修了および高校卒業とともに駒澤大学仏教学部へ進学し、駒澤大学大学院修了後、曹洞宗教化研修所をへて愛知専門尼僧堂の講師となる。四十二歳で無量寺住職、四十三歳で愛知専門尼僧堂の堂長に就任し現在に至る。二〇〇六年(平成十八年)、仏教伝道文化賞功労賞を受賞する。同年、無量寺住職を退董(退任)し、無量寺東堂となる。二〇〇九年(平成二十一年)、尼僧として初めて曹洞宗大教師に補任される。二〇二二年(令和四年)、曹洞宗大本山總持寺の西堂に就任する。尼僧堂や大本山において後進の指導にあたるとともに、執筆や講演活動のほか茶道や華道の教授として禅文化の普及・継承に努めている。
おもな著書に、『手放せば仏──「従容録」にまなぶ』『美しく豊かに生きる──阿難さまと道元禅師「八大人覚」』(以上春秋社)、『般若心経ものがたり 新装改訂版』(大法輪閣)、『さずかりの人生──欲の真ん中に自分を置かない生き方』(自由国民社)、『落ちこまない練習──病気や不幸は慈悲の贈り物』(幻冬舎)、『禅のおしえ12か月──つれづれ仏教歳時記』(佼成出版社)などがあり、旧著『美しき人に──禅に生きる尼僧の言葉』(ぱんたか)は英語・フランス語・ドイツ語など十か国語に翻訳されているほか、法話のCD(ユーキャン、致知出版社)もある。
【目次】
新装改訂版へのまえがき
はじめに
第1章 人生はみなお蔭さま
「仏さまからの授かり」といただいて
「出家する子」という予言
母の思い切なく
「宿縁」に随順して生きる
みずからの体で書く文字
母のために書いた般若心経
母の生きざまに励まされて
病気がちながらほほえみを絶やさなかった父
幼児の前で親としての姿勢を恥じる
愛を着せ、愛を食べさせる
人間の物差しから仏さまの物差しへ
仏さまが見守って下さる
深い愛と醒めた愛と
子育ては親の修行
体で学ばせる教育
辛抱強く見守る愛
やる気さえあれば
他人のことは気にしない
十五歳で出家。修行の道場へ
他人のよこしまを見るなかれ
よき導き手のお蔭さまで
第2章 おのれこそおのれのよるべ
「不自由」に身を置くことの大切さ
エゴイズムの芽を早くつみとる
窮屈だからこそ正しく歩める
法のためにこそ身命を惜しむ
夢に生きる
真夜中の試験勉強
夢、そしてさわやかなあきらめ
今ここの一歩が、輝かしい明日を開く
青春の彷徨
道ひとすじに歩む決意
恋、結婚と信仰のはざまで
一切を捨ててこそ
こだわりを捨てる
名誉欲への若き抵抗
正論の蔭にある「わが身かわいい」の思い
誰も助けてはくれない
怒りと迷いの日々
他に救いを求める虚しさ
救いの道は自分の中にある
言葉なき言葉の重み
魅力的な生活を振りきって
真心さえあれば言葉はいらない
第3章 出会いと別れから学ぶもの
ほんとうの大人になる教え
わが心の師、最後のご説法──澤木興道老師との出会いと別れ──
誓願にのみ生きよ──内山興正老師との出会い──
〝自分で自分を自分する〟坐禅
涼風の中の暑さ──余語翠巖老師との出会い──
生老病死すべてが人生の綾模様
大切な人の死に直面して
母の死
母を呼ぶ声も虚しく
供物の減らない寂しさ
まことの供養とは
法衣と花嫁衣装を同じ手で縫う母心
師であり育ての親でもある仙宗老尼との別れ
生きておられるうちに真心を
よき生きざまをすることこそ
第4章 上手に病気になる
病気も授かりもの
入院、手術の宣告
生きるも死ぬもすべておまかせ
病んでいることの自覚
「私」の尺度が争いを生む
この体ひとつも自由にならない
「当たり前」のありがたさ
大いなる生命に生かされて
命がけの排泄
精神のワン・ステップは「まず捨てる」こと
病に感謝する心
病もまた善知識
第5章 一人では生きていけない
世にそしられざるはなし
日本一若い堂長の誕生
更なる大役
お荷物は仏さまが背負って下さる
仕事に序列はない
逆境は自分を育ててくれる慈悲の痛棒
どんな仕事もまっしぐらに勤める
泥は仏をつくる材料
姿勢ひとつで俗事も仏行
泥田に咲く大白蓮のような人
借りた恩を返しながら歩む一生
浄心の布施こそ
心で写した経の輝き
貧者の一灯にまさるものなし
第6章 真理はひとつ
真実を学ぼうとする姿
宗教対話の時代
人種や宗教の垣根を越えて
姿を調えれば心も調う
お互いの融和協調のために
真理はひとつ、切り口の違いで争わぬ
切り口の違いは尊重し学び合うべきもの
「切り口しか見られない」という謙虚さこそ
第7章 悠久の国より
文明の流れを変える
人も自然も太古のままに生きる国
花も虫もひとつ生命に生かされている兄弟
人類の危機を救う大地の息吹き
間違いのない仏法を
本物の仏法を輸出したい
世界を救う仏教であるために
不易と流行と──アメリカを再訪して思ったこと──
第8章 歴史が語る声に耳を寄せて
懺悔の思いを抱く──韓国を訪ねて──
安重根と千葉十七と怨讐をこえての友情
日本の受けた恩恵と日本の犯した罪と
李王朝五百年の夢を破ったものは……
事実に遠い書かれた歴史
日本仏教は尼僧と尼寺から始まる
グループぼけせず醒めて生きたし
真理を求める先に釈尊の姿を見る
〝真実なればこそ二千五百年の星霜を超えて〟
一人によって興り、一人によって滅ぶ
異国であっても心は等しい──欧・米を訪ねて──
仏跡を訪ね感じる釈尊の御心
人生は師を求める旅
天童山と敦煌を訪ねての旅
道元禅師の足跡を慕い
人生の旅も変化があったほうがよい
莫高窟の菩薩さまを恋人に
砂漠のきびしさと緑の草木の尊さ
受けつぎ、行じ、伝えてゆく
禅が来た道を歩む
達磨大師、中国に禅を伝える
山は南を陽と呼び、河は北を陽と呼ぶ
少林寺参拝と住職の永信法師との会談
中国最初の寺、白馬寺に参詣
寺号を永平と命名される道元禅師のお心
丸顔は唐美人、細おもては魏朝好み
歴史を知り、己を見つめる
紀元前二〇〇〇年の夏の国の実在を確かめる
命がけの求道十八年、梵本翻訳に生涯をかける
己れの威を示し、人民を省みなかった始皇帝
第9章 異文化を訪ねる
文化の在り方を問う
自然の中で謙虚に生きる遊牧民──モンゴルの旅で学んだこと──
仕切りのないゲルで育つ親子の絆
諸法無我を生きる私
親と共に働くことの意味
あらゆる生命の犠牲の上に生かされている私
異なった文化圏に身をおくことで気づくこと
差別と平等を超えていく
小乗仏教への反省から生まれた大乗仏教
女性仏教徒国際会議(サキャジタ)
男女平等を説かれた道元禅師に学ぶ──タイでの女性仏教徒国際会議での講演要旨──
「仏教とキリスト教の尼僧による対話」に日本を代表して出席
第10章 道はるかなりとも
受賞
仏教伝道功労賞を受賞──四十年の間に女性では二人目──
私を支え、育てて下さった皆さんに代わっていただく賞
大教師就任ならびに喜寿の祝賀会
曹洞宗師家会会長に就任
明光寺僧堂の師家に就任
諸堂建築、そして退董へ
お茶室
本堂・鐘楼堂等の落慶と住職交替
仏さまの導きのままに
道が行ぜられている処こそ大殿堂──退董にあたっての挨拶──
〝行道の未だしきことのみを思うべし〟
ゆく処青山、ゆく処わが家
一切が「空」であると自覚する
健康の憍り、若さの憍り、長寿への憍りへの気づき
「あたりまえ」のすばらしさに気づく
本具の仏性に気づかせていただく
天地の働きに気づくことができるのは人間だけ
菩薩のごとく
同悲・同事行へと生かす
すべてを「南無」と拝み、誓願に生きる
大本山總持寺の西堂に就任──歴史始まって以来の快挙──
ISBN:9784333028832
出版社:佼成出版社
発売日:2022/12/15