ブッダのお弟子さん にっぽん哀楽遊行 タイ発――奈良や京都へ〈影〉ふたつ
ブッダのお弟子さん にっぽん哀楽遊行 タイ発――奈良や京都へ〈影〉ふたつ
「何かと失敗や間違いの多かった人生に、その終盤に生半可、ではない決意が私には必要だった」。60代後半にタイで出家した直木賞作家に何が起こったのか…本書は、著者がタイ国、チェンマイの古寺にて出家して1年が経つ頃と、それからさらに1年半余りが経過した頃、寺の副住職と連れ立って日本を旅した記録であるとともに、生き直しへの決意表明でもある。
古希の老僧(著者)と35歳のマザコン副住職のけなげで可笑しい珍道中は、文化や国民性、道徳観の違いが分かる「仏教文化エッセイ」といえよう。満員電車に戸惑い、街では女性を避けて歩き、東京タワーや新幹線にビックリ。東大寺や増上寺でご本尊に五体投地…タイ仏教の経文や戒律が日本仏教とは大きく違うことが読み通すことでよく分かる。全体にちりばめられた筆者の心境は印象に残る。母の生家でのタイ仏教式の追善供養のシーンは感動的。
後悔、悲歎、絶望ののちに出家。そしてこれからの人生をどうするのか――新鮮な「団塊の世代」論ともなっている。
笹倉明
1948年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒。80年『海を越えた者たち』(すばる文学賞入選)で作家活動へ。88年『漂流裁判』でサントリーミステリー大賞、89年『遠い国からの殺人者』で直木賞(第101回)を受賞する。 主な作品に、『東京難民事件』『海に帰ったポクサー昭和のチャンプ たこ八郎物語(「昭和のチャンプ たこ八郎物語」改題)』<電子書籍>『にっぽん国恋愛事件』『砂漠の岸に咲け』『女たちの海峡』『旅人岬』『推定有罪』『愛をゆく舟』『雪の旅―映画「新雪国」始末記』<電子書籍>』『復権 ―池永正明三十五年間の沈黙の真相』『愛闇殺』『彼に言えなかった哀しみ』等。近著に『出家への道―苦の果てに出逢ったタイ仏教』(幻冬舎新書)、『ブッダの教えが味方する歯の二大病を滅ぼす法』(共著 扶桑Books)『老僧が渡る 知恵と悟りへの海』(Web<つなごうネット>連載)、『山下財宝が暴く大戦史 ―旧日本軍は最期に何をしたのか』(育鵬社 復刻版)がある。2016年チェンマイの古寺にて出家し現在に至る。
(※略歴は刊行時のものです)
【目次】
まえがき
第一旅 アーチャーラ・コーチャラの奈良、京都、そして
第二旅 アニッチャー・アナッターの旅跡――東京から海へ
あとがき
ISBN:9784333029112
出版社:佼成出版社
発売日:2023/11/30